「ソルトーク」第2話

「ソルトーク」第2話

明日香:
シーズニング塩って、トリュフ塩とか、ハーブ塩とか、ああゆうのですよね?

青山:
そうそう、香りをつけた塩。この塩は、赤ワインに漬けて作った塩なんです。これで肉を焼いて、赤ワインを飲む、と。

明日香:
おおー。オシャレ。

青山:
ただ塩でお肉焼いて出しただけなのに、すっごく料理上手な感じでしょう。

明日香:
塩で人をおもてなしするとか、驚かせるっていう発想は、今までなかったな。

青山:
簡単で、手間もいらない。難しいことをしなくても、食材のおいしさを引き出せる。食卓に数種類、塩を置いとけば、なんだか盛り上がるんですよ。「じゃあこの塩で食べてみようか」「この塩だとどう味が変わるかな」なんて。

使い分けて楽しむ
明日香:
塩にはたくさん種類があることはよくわかったんですけど、じゃあ、どういうところを見て買えば、違いが楽しめますか?

青山:
買うときにまず気にしてほしいのは、しょっぱみが強いか弱いかと、粒が大きいか細かいかどうか。わたしの名刺の裏にも表でまとめているんですが、しょっぱさと粒の大小を基準にして、塩と相性のいい食材が分類できるんです。


明日香:
なるほど!今度、これを持って塩を買いに行きます。
ところで、しょっぱみの正体っていったい・・・?

青山:
塩に含まれるナトリウムの量でしょっぱみが変わるんです。ナトリウムの量が多ければ多いほど、塩辛い。ナトリウム以外のミネラルが多く含まれていればいるほど、まろやかになります。

明日香:
うちで使ってる塩は、この、石垣の塩なんですけど・・・ナトリウムは、100グラム中、35グラムだって。これはどうですか?
使い分けて楽しむ
青山:
石垣の塩は、しょっぱみはとても弱いほうで、まろやかな味です。反対に、しょっぱみの強い代表的な塩が、いわゆる“食塩”とか“食卓塩”ってやつです。

明日香:
ほうほう。あの、赤いキャップの。

青山:
そう。わたしたち塩仲間は“ナトリウム塩”と呼んでます。その呼び名の通り、99.5%以上がナトリウムで構成されています。これがね、塩のことを考える上では、なかなか重要なんですよ・・・
明日香:
どうしてどうして?

青山:
ナトリウム塩は、作り方が若干化学的だから、“化学塩”って呼ばれることもあるんです。海水から塩を作る過程で、ナトリウム以外のミネラルを取り除いてしまうから、まあ、不自然なものではありますよね。
人と塩と日本
明日香:
あ。そういえば、味噌ソムリエの方にインタビューした時に聞きました。天然の塩は、たとえ摂りすぎても、不要な分はカラダが自然に排出できるんですよね。でも、化学塩は作られ方が不自然だから、カラダはわかんなくて、中にためちゃうって。ナトリウムをためちゃうと、高血圧とか、現代病の一因になるんですよね。

青山:
味噌ソムリエ、さすがですね。

明日香:
それでわたし、急いで家で使ってる塩を見直しましたよ。
人と塩と日本
青山:
ナトリウム塩を嫌う人がいるのも、よくわかる。でも、こんな風にも考えられます。日本って、塩の元となる資源が、海水しかないんですね。アメリカや中国を見てみると、岩塩とか、塩湖とか、海水以外の資源もたっぷりあって、いくらでもとれる。日本って、塩弱体国なんです。

明日香:
ふむふむ。

青山:
昔は塩抜きの刑って刑罰があったように、塩は生命を維持するのに、必須のもの。

明日香:
塩抜きの刑!塩抜かれたら、どうなっちゃうんでしょう・・・?
青山:
倦怠感や脱力感でフラフラしてきて、そのうち脳からの指令が正常に届かなくなる。最後は心臓も止まります。

明日香:
おお・・・

青山:
だからね、長期的に塩が足りないような事態になったら、この国は滅びていってしまうわけです。

明日香:
塩弱体国なら、足りなくなる可能性もありますよね?大変じゃないですか!
青山:
そう。そこで、化学塩なんです。