知って得するお味噌の話「味噌トーク」

知って得するお味噌の話「味噌トーク」
第1話:聞くに聞けないお味噌の話
みそソムリエっていったい何?
明日香:
Keikoさん、きょうはどうぞよろしくおねがいします!

Keiko:
こちらこそよろしくおねがいします!

明日香:
実はRemy初のインタビュー企画なんです。

Keiko:
わたしもインタビューされるのなんて初めて。


明日香:
味噌ソムリエって、はじめて聞いたんですけど、Keikoさんはいったい何者なんですか?(笑)

Keiko:
おもしろいでしょ(笑)。味噌ソムリエは、味噌のスペシャリストです。認定協会が開催する講座をうけて、試験に合格すると、味噌ソムリエに認定してもらえます。・・・と言っても、わたし実は、お味噌キライだったんだけどね。

明日香:
え?

Keiko:
パスタがあれば生きていける、だから人生に味噌は不要だ、と思ってた(笑)

明日香:
それがなんでまた?

Keiko:
姉がフルーツや小麦のアレルギーを発症してしまったのがきっかけ。食材はもちろん、調味料から全部見直したんだけど、同じようにアレルギーに苦しむ人にも、食事を楽しんでもらいたいねってことで、米粉カフェを始めたの。そのうち、近所にあった井上糀店を知って。

明日香:
いまKeikoさんがお手伝いされているお味噌屋さんですよね?


Keiko:
そうそう。見学に行ったら、なんかその日に味噌作りを手伝わされて(笑)。そこで食べたお味噌の味が、わたしの人生を変える味だった。

明日香:
そんなに違うんだ・・・

Keiko:
とにかく食べてみてください!広げちゃっていいかな?

明日香:
すごい!お味噌がどんどん出てくる!
みそソムリエっていったい何?
Keiko:
テーブルがいっぱいになっちゃったね(笑)
明日香:
(お味噌をいくつか試食する)

明日香:
おお!おいしい!なにこれ!お味噌をそのままなめてるのに、全然しょっぱくないです。これだけで立派なおつまみになりますね。

Keiko:
ありがとう。うれしいです。わたしはお酒全然飲めなかったけど、お味噌好きになってから日本酒がおいしくって(笑)
明日香:
ほんとにおいしい。うちのお味噌を変えたくなるぐらい。このお味噌はどうやって作るんですか?

Keiko:
井上糀店のお味噌作りは、蒸したお米を広げて、糀菌をまぶして混ぜて、木製の入れ物に入れるの。それを3日間、30〜35度の部屋で保管します。その状態が、米糀っていうもの。これね。
明日香:
意外と普通のお米っぽいんですね。あ、でもよく見るとふわふわしてる。

Keiko:
それはカビね。

明日香:
カビ・・・我々はカビを食べてるのか。

Keiko:
お米に花が咲いたようだから、米に花って書いて、糀(こうじ)って読むんです。

明日香:
素敵です。日本の粋を感じます。

Keiko:
でしょ。この糀に、茹でた大豆とお塩を混ぜて、半年仕込めば完成。お米の代わりに、麦や玄米を使うと、麦味噌や玄米味噌になる。
明日香:
なるほど。Keikoさんは、味噌作りのワークショップも開かれていますけど、どんな内容なんですか?

Keiko:
利き味噌をしてもらいながら、一通り糀や味噌の説明をして、味噌作りをします。味噌作りの作業時間は、実は、30分程度なの。

明日香:
それだけでできるんですか!?

Keiko:
時間がかかる準備は、前もって私がやっておくので、来てくれる人たちは、「こんなに簡単なんだ!」って言ってくれるけど、ちゃんと説明すると、「それは自分だけじゃできない」ってなっちゃう(笑)。

明日香:
うん。わたしもそう思います。

Keiko:
それでも全然いいの。1年に1日だけ、時間をつくってわたしのところに来てもらって、お味噌を仕込む。そして、食べごろになるのを楽しみに待つ。食べごろになったら、自分で作ったお味噌を毎日食べる。これって、市販のものを食べるのとは、価値がまったく違うよね。

明日香:
愛着もわきますしね。

Keiko:
そう。自分で作ると、お味噌がかわいくてしょうがなくなっちゃうんですよ。まあ、はじめから自分で味噌をつくれとは言わないけど、本当の味噌の味を知ってもらいたいなあ、と思いますね。
明日香:
たしかに、スーパーで買う味噌と、きょう頂いてる味噌は、確実に味がちがいます。魂がある、生きてる味がする。

Keiko:
生きてる、っていうのは本当にそのとおりで。実際に、うちの店の味噌は、販売してからも発酵を続けてます。それがお味噌本来の状態なの。生きてるから、膨らんでくるし、色だって、ほら、こんなに変わってくる。
明日香:
え!?これおんなじ種類?右の方、黒くなっちゃってるじゃないですか!

Keiko:
そう。色が薄い方が、販売したばかりの味噌。右側の濃い方は、2年経った味噌。食べ比べてみて。

明日香:
う〜ん。2年モノ、なんともオツな味。チーズでいう、ウォッシュチーズみたいな。このクセがたまらないです。


明日香:でも・・・賞味期限、とっくに過ぎちゃってますよね?

Keiko:
賞味期限は、法律上、一応ついてるだけ(笑)。2年はおいしく食べられます。お味噌の場合は、腐敗じゃなくて、発酵なの。発酵をすすめてるのは、酵母のはたらき。それが腸を活発化させて、カラダの調子をよくしてくれるんです。

明日香:
発酵が大事なんですね。

Keiko:
それなのに、市販の味噌の多くは、発酵がとまるように、アルコールを加えたり、熱を加えたりして、酵母のはたらきをわざわざ止めちゃってるの。それがうちの味噌と市販の味噌の一番の違いかなぁ。

明日香:
知らなかった・・・。

Keiko:
たくさんの人に安く買ってもらうためには、安定して流通させないといけないでしょ?だから、膨らんだり、色が変わったりなんてことは、あっちゃいけない。酵母の働きは、流通とは相性が悪いんです。
明日香:
市販のお味噌でも、生きてるものもありますよね?どういうところを見て選べばいいですか?高ければ大丈夫?

Keiko:
高ければ大丈夫って信じて失敗してる人の話をよく聞くけど(笑)。値段じゃないですよ〜。天然醸造と書かれていたり、あとは、容器に空気穴が空いているとか、容器がふくらみますって注意書きがあるとか、そういうのは生きているお味噌の可能性が高いかな。

明日香:
勉強になります。
Keiko:
全国にはお味噌屋さんっていっぱいあるから、最寄りのお味噌屋さんを見つけて、応援してほしい。もっとみんなに本物の味を知ってもらって、もっとみんなに選んでもらえたら、お味噌屋さんも活気づきます。そうすれば、本物のお味噌が、もっと身近なものになる。それが一番大切で、わたしが願っていることです。