ちょっと教えてお米の話
堀さんのプロフィール

1982年生まれ。新潟県出身。がんばる農家 堀家九代目。レミパンのメーカー「和平フレイズ」に所属し、レミパンの開発管理に20年近く携わる。remy公式ストアの店舗責任者、そして「兼業農家」としての顔をもち、食と道具のおいしい関係を日々追求している。

明日香:
堀さん、お久しぶりです!今年も収穫の時期ですね!

堀:
はい、先日は早生品種の「こしいぶき」の稲刈りを終えたところです。

明日香:
まだまだこれからが本番?

堀:
はい、メインとなるコシヒカリはこれからの作業ですね!

明日香:
今年も美味しいお米を楽しみにしています。

堀:
あれ?その洋服は・・・
堀さんのプロフィール
コメ不足の理由
明日香:
突然ですが、今日は堀さんに聞きたいことがあって。

堀:
はい、お米のことでしたら何なりと。

明日香:
単刀直入に。なぜ今、こんなお米不足の事態に?

堀:
すごい状況ですよね。新潟でも品切れが目立つ状態です。

明日香:
産地でも売ってないってすごいですね。うちも、最近はパックごはんに頼ったり、パスタを作る機会が増えたり・・・
コメ不足の理由
堀:
私の私見ですが、今回のコメ不足は、大きく3つ理由があると思っています。

明日香:
教えてください。

堀:
まず、8月は一年で一番在庫が少ない時期なんです。お米は秋にしか収穫しかできません。そのお米をJAや米問屋さんが倉庫で保管して、販売店へ出荷しているのですが、そのあたりの物流リレーがうまく機能していない可能性が。

明日香:
でも、それは今年に限ったことじゃないですよね?
堀:
いえ、今年は特別で。2023年のお米の作況は、国が発表している数字より悪かったと思うんです。収穫量が圧倒的に少なかったと、周りの農家はみな口を揃えます。実際に私もそうでした。

明日香:
今年出回るお米の量は、昨年収穫されたお米の量で決まってる、ってことですね。不足することがわかっていたなら、国の備蓄米を放出して調整することもできたのでは?

堀:
この程度の米不足では国は放出しませんね。災害時用なので、今回のような需給調整には使われることはないんです。ちなみに、われわれ農家は、この備蓄米をまず優先的に出荷しなければなりません。

明日香:
そうなんですか!!食卓用より、有事の時の備えが大切なのか・・・
外国人観光客の消費
堀:
もうひとつ。今年はインバウンドで外国人観光客が例年よりたくさんお米を消費した、という説も濃厚です。

明日香:
そうらしいですね。日本人のお米の消費量は減るばかりなのに・・・。

堀:
由々しき事態です。

明日香:
でも、海外の方が日本のお米を好きになってくれるのは悪いことじゃないですよね。

堀:
それは、はい。

明日香:
いっそ、輸出を増やして日本の農家を活性化させる、なんて取り組みは?
外国人観光客の消費
堀:
お米は重くて輸送コストがかかるので、どうしても割高になってしまうんです。

明日香:
海外でも現地の安いお米たくさん売ってますもんね。

堀:
輸出米ももちろんあるんですが、やはり、お米は国内消費が基本なんです。

明日香:
せっかく輸出しても、日本のように炊飯器が普及してるわけじゃないですもんね。家でわざわざ日本のお米食べる、とはならないか。
個人の買い占め
堀:
最後にもうひとつ。私としては、コメ不足の一番の理由は、台風や地震の不安による買い占めだと思っています。

明日香:
南海トラフに、停滞する台風・・・重なりましたからね。

堀:
私はホームセンターで出荷用の箱もよく買うのですが、収穫前の8月末頃に、5キロ箱、10キロ箱だけがごっそり無くなってて。そんな光景を見るのは初めてでした。きっと、家族や親せき、友達に頼まれてお米を送ったんだろうな、と察しましたね。

明日香:
そうか、ご家族のことが心配になり、全国の産地から送ってあげたんだ。

堀:
おそらく。

明日香:
家族のためにお米を備えておきたいという気持ちはわかるなぁ。私もスーパーを何軒も回りました。他の食材よりもお米があればとりあえず安心だし、ないとこんなに不安になるなんて。やっぱりお米は最強です。
個人の買い占め
堀:
でも、どんなに溜め込んでも、お米にも賞味期限があります。精米したお米は、1か月以内に食べるのが良いとされています。これから新米も出回ることですし・・・

明日香:
あまり溜め込むと、一番おいしい新米を食べ損ねてしまうのか。

堀:
そういうことになりますね。
おいしいお米とは?
明日香:
お米のおいしさと言えば、お米には“等級”があるんですよね。

堀:
よくご存知で。1等、2等、3等、規格外。4つの区分があります。ただ、この等級は実は、外観だけで決められているんです。

明日香:
え?甘みとか旨味とか、そういうのじゃないんですね!

堀:
味や食味は、出荷時点では一切審査されません。でも、年末あたりに全国から集まったお米の品質をランク付けするイベントはあります。
おいしいお米とは?
明日香:
堀さんのお米は?

堀:
ありがたいことに、19年連続で、食味評価については5段階評価で5を貰っています。

明日香:
すごいじゃないですか!!何か特別な育て方をしてるとか?

堀:
有機肥料で育てた方が美味しいと、親の代から言われてまして。手間がかかるんですけどね。
明日香:
農家さんも高齢化が進み、みなさん苦労されてますよね。

堀:
手間がかかるから、作る人も減ってしまう。新潟でも廃業が多いんです。お米の消費量も減る一方で。

明日香:
寂しいですね。百の仕事ができるから「百姓」、という言葉を聞いたことがあるんですが、もっとリスペクトされるべきだと思います。日本人の心であるお米を支えてくれているのに。

堀:
そんな偉そうなことは思わないですよ。

明日香:
思っていいですよ。
来年はどうなる?
明日香:
来年もお米不足は起こるのでしょうか?今年は雷が多く、雷が多い年は豊作になるって聞いたことがあるのですが。

堀:
大丈夫だと思いますよ。去年は、新潟は40度手前まで気温が上がったり、40日近く雨が降らなかったり、河川が枯渇して海水が逆流したり、とにかく異常でした。今年も暑いですが、私の地元ではそういう大きな自然災害が無かったので、収穫量は例年並みじゃないかなと思っています。

明日香:
雷は関係ない?

堀:
雷は「イナズマ」とも呼ぶじゃないですか。漢字で書くと、稲の妻なのですが、夕立や雷が多い時期が、ちょうど稲穂が出てくる時期と重なるんですね。だから昔の人は、雷が稲穂を生む、と考えていたそうです。雷が多いと豊作っていうのは、こういうところから来てるんじゃないでしょうかね。

明日香:
なんだかロマンチックな話ですね。
来年はどうなる?
明日香:
今日はいろいろ勉強になりました。面白い話もたくさん聞けて。ありがとうございました!

堀:
いえいえ。コシヒカリの収穫も頑張りますんで、また食べてやってください。

明日香:
消費する分だけ、買わせていただきます。
ありがとうございました!
※この対談(チャット)は、2024年9月5日にビデオ電話で行われたもので、remyの会員さまだけに公開しています。