情熱と諦めのあいだ:子供の食事に疲れないコツ

情熱と諦めのあいだ:子供の食事に疲れないコツ
一番下の娘の離乳食をはじめました。食べさせているのはべちゃべちゃなお粥ですが、なぜか上のふたりまで、それが食べたい!と、手を出す事態。手をかけてつきっきりで食べさせている様子がうらやましいのでしょうか。あの頃は食べてくれなかったくせに・・・と、上のふたりの離乳食期をよく思い出します。ようやく食べてくれたと思ったそばから、べべーっと出す0才。好きになったらそればっかり食べたがる2才。なんにでもチーズを足したがる4才。離乳食を経て、大人とおなじものを食べさせていく中で、次々と新しい悩みにぶつかっています。
好き嫌いは、本能?
離乳食や幼児食に苦戦するおかあさんたちの悩みでよく聞くのが、はじめのうちはなんでも嫌がらずに食べていたのに、次第に好き嫌いや食べムラが出てくる、ということ。でもそれは、子供が味覚を身につけ始めているサインでもあります。これも成長のしるしだと、大きくかまえて・・・もいられないのが正直なところ。お悩み解決の助けになるかはわかりませんが、食育がテーマの講習会で、こんな話を聞いたことがあります。

子供が苦味に敏感なのは、動物、特に肉食動物がもつ本能の、警戒心のなごり。自然に存在する毒物の多くは苦味があるため、苦いものは毒を持っていると判断し、身を守るため反射的に拒否するそうです。酸味もおなじで、酸っぱいものは腐っていると判断。困ったことに、苦味や酸味は野菜にも多く、子供が野菜嫌いになりがちなのも、それが原因のひとつなのだとか。反対に、甘味はエネルギー、塩味はミネラル、うま味はたんぱく質といったように、生きるために不可欠な栄養素を含んでいると子供は判断し、積極的に摂ろうとするようです。まだひとりじゃなんにもできない、ふにゃふにゃで無垢なあかちゃんにも、動物としての本能が備わっていて、それはごはんを食べることで芽生え始める。なんだか、ドラマチックです。
好き嫌いは、本能?
この話を聞いてから、我が子たちがあまりにも頑固に食べてくれないときは、「動物的な嗅覚で避けようとしているのかもしれないから、しょうがないか」と思って、試合放棄することを覚えました。うるさく言ってばっかりじゃ食卓がどんよりしますから。そうはいってもライオンのおかあさんじゃないので、本能任せに肉ばかりあげてればいいというわけにはいかず、悩みもします。そういうときは、「こんなにおいしいのに食べないなんて、あ〜もったいない」と言いながら、大人がおいしそうに食べるのを見せ続け、いずれ子供から積極的に食べてくれると信じるようにしています。
新しい味で、人生を広げよう。
私の場合、子供たちに食べものの好き嫌いをさせたくないのは、もちろん栄養バランスのこともありますが、それよりも、いろんな味を知ってなんでもおいしく食べられた方が、絶対に人生たのしいと思うからです。例えばカレーひとつとっても、土地によって、お店によって、おうちによって、それぞれの味があるように、味というのは、文化や、伝統や、人の思いなんかをのせています。だから、新しい味に出合うと、自分の感性がぐっと豊かになるような気がします。子供たちにも、たくさんの味を知って、酸いも甘いも楽しめる豊かなこころで、人生たのしんでもらいたいと願っています。

ところで、大人になっても新しい味との出合いはあります。たとえば、レミさん考案「ニンニクどっさり鍋」。はじめて食べたときは、個性的なスープの香りや、ごろごろ入っている具の正体がわからず、まさに新しい味との出合いでした。その名の通り、ニンニクがどっさりごろごろ入っていますが、やわらかく煮込まれて香りはまろやか、お芋のようにホクホク。それから、スープの味を決めているのは、ナンプラー。独特な香りに最初は若干抵抗がありましたが、食べてみればもう病み付きに。大人も子供も夢中でお箸がすすむおいしさなので、お鍋料理のレパートリーに、ぜひ追加してみてください。